より早く、より深く、より正確に

碁が考えるゲームというなら、ベースになっているのはヨミに他ならない。




                                            高野圭介


石田芳夫、小林覚
の解説


 より速く、より高く、より強くとはスポーツの祭典・オリンピック。
より早く、より深く、より正確にとは碁の神髄・ヨミの極致。

 いつもプロの碁の解説を聞いていると、瞬間のヨミの凄さに感嘆する。
とりわけ、石田芳夫、小林覚の解説は
局面の進展と共に次々生じる変化に鮮やかな筋で、
確かな形で、変化図が示される。このヨミはまさに神業。

ヨミが碁の中核
 ヨミは相手の応手を推理しながら心眼でヨンでいくもので、
このヨミが碁の中核を成すものです。

 ところが、序盤や中盤の手どころに入る前などは幾らヨムと言っても
、一手も分からないことも多くあって、これなど、
ヨミというより感覚、経験、勘などに頼らねばならない。

天才・宇太郎
天才・宇太郎の記憶力に関する想像を超えた話は山ほどあるが、
私も宇太郎先生に驚嘆した場面に幾度か直面しました。

例えば、「宍粟の碁」出版記念囲碁大会のとき、
次の一手の出題をお願いしたところ、すらすらと石を大盤に並べて、
「高野さん、この辺にしましょうか?もう少しかな?」などと言いながら、
「この碁はご存じですか?」と聞かれた。
私にはそんなの分かろうハズが無い。

実はそれが、本因坊道知と井上因碩の城碁の一局であった。

瀬越憲作
瀬越憲作はこう言っている。
「碁の難しいところは記憶や推理でいかぬところがあり、そこが難しい。」と。

とは言え、碁が考えるゲームというなら、
ベースになっているのはヨミに他ならない。


またプロとアマの根本的な違いはヨミの力。
すなわちプロのヨミが「より早く、より深く、より正確に」出来る素質の上に
たゆまぬ訓練の賜物であることには間違いない。

英才教育 
昨今、中国でも韓国でも若手の登場が顕著である。
日本でもこのたび「次代の主役」がヤングパワーにすべく
「ゆうちょ杯ユース選手権~中野孝次メモリアル」が発足した。

世界の子ども達の英才教育もますます早めになり、
初心者年齢も早まっている。
数字を知らない子どもが自分流で、勝負の帰趨を知っている。

かっては、天才は一年で初段、3年で5段。そう聞いたものだ。

私は寡聞にして現在の実体を知らないし、
手ほどきから教育のノウハウも机上の空論に近い。