イスラム国の大義


                                       高野圭介

ACCの講義に「新西洋史」鈴木利章神大教授に1997年から2001年まで丸4ヶ年間通った。
その間、52回の講義と鈴木先生の神大退官最終講義をすべてノートしたのが
そのまま残っている。それも、もう15年経った。

昨今、イスラム国が非難の的になって、社会から葬去られようとしている。
盗人にも三分の理といわれるが、
それ以上にイスラム国には人知れずイスラムの大義があるのでないか。
鈴木先生の講義から私なりに、おぼろげな大義が浮かんできた。
52回の講義から抽出して一挙に纏めるという作業である。
肝心のつなぎを端折って進むので、ご了解いただきたい。

1.

地球の歴史 



今、歴史を地球全体から眺めてみると、今のところ「ヨ-ロッパというものが大きくなっていった
過程:プロセス」つまり「西ヨ-ロッパが自分の世界を全世界に広めていった歴史」と言えよう。

遡れば始めはECが強かったのではなかった。いつ頃からか、強いというより、傲慢になった。
ではいつ頃から傲慢になったか。最近?ではいつまで傲慢は続くか。

さて、傲慢で威張っている人間のみは更に繁殖するだろう。人間のエゴは自然を破壊し、
住めなくなったとき、何が起こるか。自然淘汰で誰かが抹殺される。

きっと、黄が危ない。白が残る・・・

 
2.

ユダヤ教
キリスト教
イスラム教


  さて、初期のヨ-ロッパは芽を出してくる直前に揉まれた。
ロ-マはアウグストスが地中海世界を統一して以来ロ-マ帝政時代を迎え、
トラヤヌス帝時代から五賢帝の200年に亘って、最大最強のロ-マ帝国が出現した。

やがて、ロ-マ帝国の分裂である。
東ロ-マはギリシャ語世界・・・伝統があって強かった。
西ロ-マはラテン語世界・・・血深泥になって自分の世界を築こうとした。
ここに、もう一つの世界・・・モハッメッドがアラビア半島に出現する。
さて、このイスラム教の世界の出現は必然であった。

そもそもユダヤ教・キリスト教・イスラム教は違うように見えて同一宗教である。
キリストはイエスという人の口を借りて「私は神である」と言わしめた。
マリアの実在も怪しい。イスラムはモハメッドの口を借りて「アラ-の神」と言わせしむ。

3.

ヘレニズム文化
の後継者こそ
イスラム文化

 


マケドニアのアレキサンダ-大王がペルシャ・エジプト・インドに遠征した。
その結果、西方のギリシャ文化と東方のオリエント文化の交流が行われ、
双方が融合し、ヘレニズム文化が生まれた。

文化の中心はギリシャから東方に移り、エジプトのアレキサンドリア、
シリアのアンチオキア、小アジア(今のトルコ)のペルガモンなどが中心となった。

ヘレニズム文化としてのインドのガンダ-ラ美術は中国から朝鮮を経て
日本にも入り、飛鳥文化となった。

ここにオリエントとは西南アジアからエジプトに至る一帯の総称である。
メソポタミア文化・エジプト文化、そしてフェニキア人によって地中海地方に広まり、
エ-ゲ海文明となる。この間、エジプト、バビロニア、ヘブライ、フェニキアと生まれたが、
BC8世紀にアッシリア、BC6世紀にはペルシャが統一した。

この時代になるとギリシャ的な枠組みがはっきりしてくる。
そして、今、イスラム文化こそヘレニズム文化の継承者である。

なぜか、ルネッサンス以降も、ヨ-ロッパではロ-マの古典、ギリシャの哲学に
人間の重要なものはすべて含まれている。これが教養のすべてであるという風潮がある。

つまり、イスラム文化は西洋社会での教養の基となっている。

 イスラム国の誕生  
イスラム国の誕生

 昨年6月、イスラム国はカリフ制国家の樹立を宣言した。
「屈辱と恥辱の塵埃を払い落とせ」と呼びかけ「中東のカオスの中から、
混迷と絶望の中から、新しいカリフ制国家が出現する」と続ける。
第1次世界大戦中に、イギリスとフランスによるイスラム・オスマン帝国解体、
領土分割と支配を定めた「サイクス=ピコ協定」の終焉をかかげ、
数世紀におよぶ屈辱、差別、異教徒への屈従からの解放を訴える。
欧米先進国は、この歴史上の暴挙を今もって反省も謝罪もしていない。

 ロレッタ・ナポリオーニは、著作イスラム国で「冷戦期以後の代理戦争環境
において、対テロ戦争の廃墟の中から『イスラム国』はその姿を現した」
「9・11への欧米の対応が中東の一部を宗派抗争に陥れたことが、
世界に長く暗い影を落としたことも忘れてはならない」とし、さらに、
先進国による対テロ政策は、カリフ制国家の出現を防ぐこ
とに失敗したと認めなければならない」
「そしてまた、先進国の責任に直面すべきとき
も来ている」
カリフ制国家の本質は、数十年におよぶ欧米の政治お
よび
中東への介入
と深く結びついている」と論じている。

反核・反戦 イロハネット   (No-127)     2015/2/21

                          拡散歓迎  吉田 隆 より

4.

文化的にも
貧しかった
西ヨーロッパ


東方、中国の漢民族に押されて、フン族・匈奴が西に逃げた。
 東方に定着していたゲルマン族は攻め込まれ、ドミノ現象を起こして、ガリアに攻め込んだ。
そこに gothic :であり、東ゴ-ト国・西ゴ-ト国を作ることになった。
 ゲルマン民族はどんどん西征する。
ゲルマンの一派を vandal と呼ぶが、英語の、 vandalism:(文化を壊す)野蛮の語源である。

ゲルマンの大移動が起こり、グレゴリウス大教皇の 7~9世紀の頃のヨーロッパは
殆ど森の生活で、かつかつの生活、水準の低い生活を強いられていた。
だから、混乱にもうち勝ち、忍耐強い。だから「知足」を知っていた。

主食の大麦の生産性は2倍、ある年の古文書では蒔いた麦と同数、
という記録さえある。だから、常に空腹状態にあったと見て良い。
因みにメソポタミアのシュメールでさえ、小麦は40倍であった。

フランスの森の生活の厳しさを象徴しているのが
ペロー、グリム、イソップの一連の童話である。
16~17世紀に、森の中を行ったり来たりする生活の中で、
中世の社会を描写し、風刺する教訓含みの数々の童話が出来た。



たとえばイソップ童話の「蟻ときりぎりす」では、キリギリスは飢え死にする。
「ヘンデルとグレーテル」はグリム童話の、男の子と女の子が森の中を彷徨い
お菓子の家に行ったり、魔法が出てくるのだが、実は飢饉のとき誰を助けるかと言うと、
まず、夫婦、次は優秀で元気な子ども。そして、捨て子候補は弱い子であった。

ルナールの「ニンジン」はまさにその話である。
現在では随分軟化して、殆どが「助けられる」ことになる。
キリスト教文化は後進で、一口に言って、貧しい後進国であった。


 5.

キリスト教と
イスラム教


イライラ戦争はシーアル派のイラクとスンニ派のイランの戦いであり、
湾岸戦争はキリストとイスラムの戦い、と私は思っている。

思うに、現在ののフセインもアラブ文化は今なおキリスト文化よりも
遙かに高いものと信じているのではないか。

これは2000年頃の世相時代の鈴木先生のお話である。

想像もしなかったイスラム社会の高い文化の話は
ずーっと私に棲み着いていた。

現今の、イスラム国はフセインの流れの終結した組織であることが問題だ。


  6.

イスラムは
やはり、イスラム


ここからが、あくまでも推論だが、、、高野説となる。

イスラム教がスンニ派とシーア派に分かれていようとも、恰もキリスト教が
カトリックとプロテスタントのように、二律背反の世界が必然的にやってくるものだ。
これは史的弁証法の指摘するところである。
イスラムの何派であれ、イスラムはイスラム。同じ穴のムジナだ。

日本の仏教でも、真言宗、真宗、禅宗・・・何宗であれ、全員仏教徒だ。
仮に、他宗から真宗が誹謗されても、その趣旨が
仏陀の教えの核心に触れるところであったら、他の仏教徒は黙っていないだろう。

キリスト教が「殉死」を聖なるものと信じて、十字架に殉じたではないか。
イスラム教も同じく、死を恐れないどころか、死は賛美の対象では無いか。

7.

イスラムの大義

詰まるところ、
イスラムの大義

西欧:キリスト教社会の植民地化・世界制覇。
貧弱であったキリストがイスラムを凌駕している。
その傲慢さに耐えきれない。眼にものを見せて呉れん。

昔を今にイスラムの原始に帰れ!イスラムルネッサンス。十字軍を許すな!

先日、イスラム国が「日本が十字軍に参加した」と言った。
これは、日本が傲慢なキリスト教西欧軍に参加したと、言っているのだ。

「キリスト、何するものぞ」と後塵を拝する訳にいかない。
仮に、今のイスラム国が壊滅しても、また遠からずキリストに対抗するイスラムの
極左、極右が不死鳥となって、、焼けポックリに火が付くという構図が見えます。

cf: http://gokichikai.jp/essay-sukkutatu.html 「スックと立つ」

8.

日本は危険

な十字軍


 
現今の日本の立場は危険極まりない

安倍首相は、昨年9月23日ニューヨークでエジプトのシシ大統領と会談したが、

日経新聞は「首相『空爆でイスラム国壊滅を』エジプト大統領と会談
の見出しで伝えている。続いて25日には、
イラクのマスーム大統領と会談し、
日本は、イラク政府も含む国際社会のISILに対する闘いを支持しており、
IS
ILが弱体化され壊滅されることにつながることを期待する」と発言した

(外務省HP)
  イロハネット ysd-t2@jcom.home.ne.jp より


日本はイスラムの理解が要る。いつ何時、オールイスラムと対決になるか!
「今日の友は明日の敵」。どうなるか分かったものでは無い。