第九の合唱
大阪城ホール・一万人の第九より

第九の拍手鳴りやまず
                                            高野圭介




師走の大阪城ホールに「ベートーベンの第九」の大合唱が轟いた。
言わずと知れたコンダクター・
佐渡裕の「一万人の第九」である。

思えば1984年師走、姫路の「第九交響曲の夕べ」が私の初舞台だった。
気が付いたら、もう20年選手で、FAの権利が生じている。世に言うベテランであろうか。


いっぱんに第九の歌い手としての会員は、
今60歳台のいわゆる団塊の世代が男女とも急増していると聞く。
このたびの「第24回・一万人の第九」には80.90歳の方が20人余り来られていた模様で、
素晴らしいことだった。私もいずれその仲間に入れたらいいのだが。


        


それかあらぬか、第一楽章から終曲まですっかりお馴染みで、
ソロのパートも歌えるし、アルト・テナー・ソプラノの音程もほどほどに分かってきた。

良いことばかりではない。間違って覚えてしまったところは、錆び付いてしまってレコードの壊れたように、
ぐるぐる回ってしまう。碁で言う、下手なりに固まってしまったようなもの。

それも知らぬよりまし、などと言うと僭越極まりなくなるだろう。
そうだ。定石のうろ覚えに匹敵するかな。

 

ベートーベン合唱の指示

ベートーベンは合唱の指示は出来ないことをしろ!と、指示している。

特に音域。
ソプラには極限を超えた高さの維持を。テナーにはオクターブの急激な上下を。
その他、強弱、音色など。

歌の意味をしっかり捉えられていないと歌えないような特殊な指示も。

そのために、
歌はメロディだけ追うのではなく、心を歌うよう、
練習中も発声練習に相当量の時間が割かれていた。


 
合唱指導

神戸の合唱指導・青木耕平の発声練習は巧みで素晴らしい。

1と2と・・・・♪♪♪アヘアヘ♪♪♪マメマメ♪♪♪あははっは♪♪♪
喉を丸く、大きく開いて、声を遠くに高く飛ばす。

すべてを知り尽くし、洒落の名人・合唱指導者・有元正人の言や好し。

「♪♪♪隣のビアガーデン♪♪♪隣のビアガーデン♪♪♪
一万人という合唱は一人一人が力んで張り上げるのではなく、
それぞれが習ったことをきちっと歌うことなんです」と。

また、服部公一は紙上に曰く、

「高齢者合唱には、周りが口を開けるのを見て、安心して声を出す方式が多いのだが、
合唱は隣の人を気にしないで、自分で判断して歌って下さい」と。
(日経(2006年12月4日)の文化欄より)



佐渡裕の合唱指導

佐渡裕指揮となると、その事前にも、当日も、
先生ご自身の入念なリハーサルがある。



要点は三つ。

一.出だしを音程確かに、パンチのある、拡がりのある声を出せ。
二.言語を明瞭に、はっきりと。たとえば「ダイネツァウベル」など。
三.テーマである「Brueder」「Fruede」などは格別しっかり歌え。


指揮の楽しさを伝授

佐渡裕コンダクターが神戸の住吉小学校で授業した。
「指揮者は拍子を合わせるだけでなく、曲の意味を伝えるのが大事」と強調した。
(朝日新聞2006年12月6日付け)