コミは7.5目が理想か −後手先手の着手の平均化の問題提起− 高野圭介 「互い先の手合いは、コミは7.5目が理想かも知れない」 思いがけないことから、そのように思うようになったのは、つい昨今のことである。 プロプロ置き碁を調べている内に、置き石の力が15目/1子ではないか、 ということに帰納的に推理されたことだった。
この推理からすれば、先手・後手の差は「2分の1」であるから、 15目の半分・7.5目が至当と、直感したわけである。 コミ碁の歴史はそんなに古くはない。コミが制定された頃は 「コミ碁は碁にあらず」と酷評の向きもあったし、素直に受け入れられなかった。 過去の日本棋院のコミ制度を振り返ると、1949年に4.5目が制定され、 1954年に、5.5目に変更され、2004年に6.5目と改訂された。 その変わってきた期間はそれぞれ 5年、50年かかっている。 この間、先着の効は、コミ5.5目でも実態が黒番有利というのは 経験則からずーと早くから認識されて、プロ・アマ・内外でも、 握りで当たれば、黒を持ちたい棋客が多いのも頷かれる。 中国、韓国はすでに2,3年も前から、6.5目制となっていた。 台湾の応祥棋はing rule として、すでに8目を世に問うている。 このように、コミが最初となら、2目も増えたということは、 1着の価値が、その2倍の4目分増えた認識になるわけだが、 プロプロ置き碁の分析からすると、15目の半分・7.5目と、なり、 1着の価値は、将来更に2目分増えそうな気配がある。 いったい、同じ碁だのに、昔は1着の価値が少なかったのはなぜだろう? 思うに、言い換えると、碁が変わってきたわけと、思わざるを得ない。 古碁と最新の碁の違いは、呉清源・木谷実の「新布石論」に始まり、碁に革命が起きた。 田中不二男、武宮正樹、苑田勇一、山下敬吾らの宇宙派を旗手とする 「隅から中央へ」「地から勢力へ」それが進化した20世紀の碁と認識すれば、理解し易い。
今後は「部分の変化から全局のバランスへ」が 更に改良が加えられるであろう。それが21世紀の碁とすれば、 更に、ン十年先には7.5目が通り相場になっていく可能性はなきにしもあらず。
でも、地に辛い手法がダメになったと言っているのではない。 「武宮正樹と小林光一は実は同じことをやっている」説を尊重するならば、 中からでも外からでも碁盤を広く使って、 「バランス」という点では表裏一致していることを忘れてはならない。 卑近な裏話をすれば、碁を上達したいなら、 全局のバランス重視以外に考えようがないと言うことを。 それは何百年も先のことなのかも知れないが、 遠からず、7.5目が常識となるかも知れないのだ。 |