南イタリアの遺跡から歴史を読む

  ギリシャ と ノルマン

シチリアで共生と繁栄をもたらした

                                    高野圭介

 イタリア航空(Alitalia)の機内に、Ulisse という雑誌があった。

ギリシャのホメロスの叙事詩『ユリシーズ』(Ulysses)のイタリア語で、
トロイの木馬の創案者・英雄ユリシ−ズがトロイ戦争からの
帰還の途中に遭遇する波乱万丈の恋と冒険の物語です。
注:『オデユッセイア』はその後編ともいうべきホメロスの作品

イタリアとギリシャは古来から緊密な関係にあったのだ。


7年前の春、シチリア海峡で、漁船の網に、
人の半身のようなものが引っかかった。
顔を天に向け、双眸は虚空を見ていたという。

ブロンズ像「踊るサテュロス」が2000年の眠りから覚めた瞬間である。
青年サテェロスはギリシャ神話の森の精で、
酒神・ディオニソスに従っていた。

引き上げられた「踊るサテュロス」は愛知万博に、出展される。
白い大理石を嵌めた目をぼんやり法悦の境地に遊ばせ、
形のよい唇をわずかに開いている・・・という。






 もう 5年も前のこと、ナポリ博物館に足を運んで、息を飲んだ。
  ギリシャ彫刻の人間像がずらりと並んでいる。

       マーブルの秋ギリシャ鼻ローマ鼻   圭介

聞けば、ナポリも、南イタリアはほとんどがギリシャの植民地だった。
調べると、シチリアもそうだった。




 文明の十字路、地中海の中央に浮かぶシチリアは古来、
東西南北から異民族が侵入し、支配し、
それぞれの覇者が大急ぎで足跡を残しながら立ち去ったとしか思えない。

歴史の流れを俯瞰すれば

 ここ、シチリアは古代には
ギリシャ、ローマ、ヴァンダル族、東ゴート族、ビザンツの支配を経て、
中世にはアラブ、ノルマン、ドイツ、フランス、スペインと、相次ぎ、
近世には北イタリアのサヴォイア家、オーストリアのハプスブルグ家、
ナポリのブルボン家が続き、1860年にはイタリア王国に併合され、
1945年以降現在では、イタリア共和国の特別自治区として
自治が認められている。




 この怖ろしいばかりの錯綜した歴史の中で、
原住民は痛めつけられ、搾取されっぱなし。

その中で、ギリシャ時代のシラクーサ時代、
ノルマンのパレルモ時代は搾取されていた他の時代に比して全く違う。
先住民と共生して、繁栄させたので、島民が心から誇りに思っているところの
特異な時代が僅か、古代の支配者・ギリシャとノルマンの時代だけであった。


01 ギリシャ 時代
02 ノルマン 時代