深化するコンピューターの碁

       



コンピューターの碁


                                                 高野圭介


将棋の名人が負けた

 

突然、テレビから流れ出た音声と画像。
「将棋のプロがコンピューターに負けた。」と。

米長元名人は「序盤は完璧だったが、見落としがあった。
私が弱かった」と無念さをにじませた。 


チェスの王者が負けた。

 

 チェスでは1997年、当時の王者、ガルリ・カスパロフ
コンピューターに敗れた。

将棋は取った駒を使えるから、チェスより変化がはるかに複雑で、
ソフトはなかなか人間に追いつけないでいたが、
近年急速に実力が伸びてきていた。





パソコンのゲーム

一人で遊んでいた

80歳の私の母


 ゲームと言えば、麻雀のことが思い出される。

1980年代のこと、私は店の会計をNECのパソコンで処理していた。
 その頃、西宮の妹から一台のシャープのパソコンが送ってきた。

それには
「百人一首のカルタ」と、「麻雀」のソフが付いていて、
それで80代の母(私の母・智恵子)の遊び相手をさせよ、と言うのである。

 
 
当時のパソコンはMS-DOSのコマンドで立ち上げ、動かすものであったから、
config(configuration)を書き換えたりした。


一つ間違えば、どうしようもなくなるような厳しい作業が要ったものだ。
今、思うと、
とんでもない曲芸だった。それを80歳代の母に教えた。
母は一人でパソコンを立派にこなして、この二つのゲームで遊んでいた。


 それを見た光泉寺のお坊さんが「パソコンで遊ぶお祖母さん」と
町中言いふらしたこともあったっけ。

Markの創作・IGS
今、日本中、否、世界中を席卷している囲碁対局ソフトに、IGSがある。
IGS (Internet Go Server)は日本ではパンダネットで知られている。

このソフトを創作したのは、プログラマー・
Mark Okadaで、
私は彼とは40年の永いお付き合いという、、、親友である。

マークはアップルのOSを1ヶ年でマスターし、IGSを創作した。
今は昔の話である。


碁はパターン認識と
ブルース・トムソン

 

 私が「碁のソフト」について知ったのは、アメリカはサンフランシスコの
コンピューターのプログラマー・
Bruce Tomson
「多分、コンピューターの碁のパターン認識が基本だろう」と言っていたので、

意味がサッパリ分からないまま、そんなものかな?と思っていた。

小山正樹工学博士
小山正樹博士の言である。

最初のコンピューターの打ち碁は
「データーベースの照合で、パターンマッチング」をして、
囲碁のソフトを作成していた。

それが「手段」などの名ソフトを産んだ。

ただ、データーベースを打ち込む制作者の域を超えるのに難があって、
強さの限界がプロの域に達しにくいきらいがある。それが問題。





囲碁ソフト「手段」の創作者・陳 志行博士

 
時経て、2004年のこと、私は囲碁のコンピューター
「手段」(日本名)の創作者・陳志行博士と碁を打ったことがある。

先生は私と同い年の1931年生まれ。先生は昼夜を問わず、
「手段」の研究に打ち込まれていて、2007年頃他界されたと聞いた。
素晴らしい先生であった。惜しいことだ。

「手段」・碁のプログラム

互先 高野圭介 vs  先番 陳 志行
                黒7.5目コミ出し

161手完 黒中押し勝ち

">








2011年
第5回UEC杯
コンピューター
囲碁大会
に於いて

優勝したのは
天頂(ZEN)だった。




グラム名
1 Zen
2 Erica
3 Aya
4 Pachi
5 Many Faces of Go
6 blast
7 GOGATAKI
8 勝也






 

互先 Erica vs. 先番 ZEN(天頂)
              6.5目コミ出し

173手完 黒中押し勝ち

">

(2012年年初に、天頂Uが次にバージョンアップされて、天頂Vが世に出た。


この二つのソフトとエキシビションマッチが行われた。

2011年12月3日(土)4日(日)に次の組み合わせで
エキシビションマッチ(6子局)を行いました。

( 第一試合 
Erica vs 小林千寿五段で、小林千寿五段の中押し勝ち。)


第二試合  鄭銘コウ九段 vs 6子 ZEN(天頂V)

186手完 黒中押し勝ち



 
モンテカルロ法で
どこまで強くなるか


小山正樹工学博士は「コンピュータ^-は人間より強くなって当然!」
豪語してはばからない。

昨今、乱数を駆使するモンテカルロ法を導入して、
コンピューターは一躍グレードを上げてきた。


盤上の打着点を乱数によって網羅し、一着のその都度、
あまねく何万回、何100万回とシュミレーションを行います。
その中で、コンピューター自身が最善の着点を選ぶやりかたという。

・・・・コンピューターが判定して、着点を決める・・・・
それは
モンテカルロ法は原理的にはデータベースを使わないので、
ある時点から100万局打って(白、黒、白、黒...と)一番強い対局の
次の手の点を着手点とするというものです。

モンテカルロ法のソフトと雖も、演算の時間と、もう少し、
演算機能の高いPCでなければ、早くから枝刈りしてしまい、
存分に威力を発揮できないという限界もあるようだ。

それが、2011年 第5回UEC杯コンピュータ囲碁大会に於いて
優勝したのは天頂U(ZEN)だった。2012年年明けするや?、
天頂Uがバージョンアップされて、天頂Vが出た。
いずれ、プロの域に達するであろうという予測がある。


モンテカルロ法の
問題点


  最近急速な進歩を見せている対戦ソフトは、
モンテカルロ法を応用しているとのことだ。
上記の私の議論にそっていえば、複数個の手のそれぞれに確率を付与して
利得関数を最大化するのではなく、有限個の手の流れを打ってみて、
それぞれの流れの行き着く先を『形勢判断』し、
これによって当面の手を選択するというものである。

形勢判断をどういう評価関数でやるのか、というのが次の問題であるが。
 
モンテカルロ法は、いわば「試行錯誤法」であって、
ソフトの開発法としては本筋ではないと思う。


この方法である程度までは強くなるが限界があるだろう。
特に、形勢判断の評価関数をいかに作るか、
その論理を築くのが囲碁理論の本筋と思う。

そのためには、第一段階の理想化された場合の理論化が不可欠であろう。

高野雅永の九子局 
高野雅永 vs 9子 天頂U(ZEN)

259手完 白中押し勝ち




高野雅永 vs 天頂U(ZEN)打ち碁集

(長考の無制限の設定)
2012年1月の打ち碁集

3子局から9子局まで・・全局、白勝ちとなりました。