井山はなぜ負けたか 第37期棋聖戦七番勝負第4局の謎に迫る
張棋聖の4連覇か、井山本因坊の6冠達成か 天下分け目の七番勝負
高野圭介 |
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黒の不安を予感 | 天衣無縫の井山がブッチギリではやばやと負けた。負け方が哀しい。 成すところ無く負けた!棋界のビッグニュースである。 なぜ負けたか? 私は「負けるべくして負けた!」と思っている。 アマだからこそ言える暴言かも知れないが、私には、 第一日目の打ち掛けの図で「黒の不安」を予感した。 |
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石の価値観が逆 | 理由は、江戸時代には「隅の価値が高い」という常識的な感覚を 井山が本局の最善手、最強手として導入し、そう信じて打っている。 それがマイナスに働いたからということだ。 直近の数十年もの間に、石の価値観が逆になっているものを 手堅い布石と勘違いされているとしか思えない。 解説のプロの大先生はどなたも、「定石」の一言で、何の疑義を持たない。 それは、プロ棋士として、余りにも当然で、それ以上の発言は不理盡である。 |
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価値の基準 | それは、昭和初期の新布石法以降、コミの変化が示すように、 3線より下の石で、地に辛い隅の地先占が、どちらかというと、 本局では価値が低いという基準が支配してきている。 一般には、一口にこの姿を「勢いが無い」と表現する。 そのために、精度の高いヨミのレベルも発揮する場面が無かった。 私はそう確信をしている。
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三隅の実利? | 今、検証しよう。試みに、 28手までの局面と、68手までの局面の3線以下と4線より中の石数を数えてみた。 28手までで、4線より中を打っている石が、白7個、黒3個の4個差で白が多い。 ところが、YOMIURI ONLINEのコンピューターの地合計算では コミ6.5目を計算に入れて、28手目の時点で白37.5目勝ち。 |
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白に勢いがある | 打ち掛けの68手の時点で、4線より中を打っている石が、白17個、黒15個の3個差。 更に、完全に捕獲されている石が黒3個。 こういう状態を「白に勢いがある」と言う。 ところが、YOMIURI ONLINEのコンピューターの地合計算では 68手目の時点で白40.5目勝ち。と数字が出ている。不思議な数字である。 |
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YOMIURI ONLINE | これを別の表現では、初めから黒は中を打たないで、隅の地を確保した。 白はしっかり中を打っているということだ。 特に、上辺に広がる白の模様の評価がすべてである。 加えて、下辺の白模様が、そっくり本物の白地と化した。 それに比べて、黒は何一つ増えていない。嗚呼! これはコンピューター独特の計算法でもあるけれども、 明白に白の打ちやすい局面と見ている程度だろうが。 |
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正直な 一着の価値 | この計算は「価値の高い石を選んで行けば、自然に宇宙流になる」と喝破する 武宮・宇宙流の診断ならば、「諾!」と頷くはずである。 たとえ井山が打ったといえども、 序盤に石の一着の価値が正直に数字を弾き出した そのままの結末でこの碁は終始した。 諸賢のご高評をお待ちしています。 |
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