特別寄稿 吸収力・・・第6報 浜辺 荘
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彼は初心者だった頃から、碁に対しては冷静沈着でした。 たとえ悔しい負け方をしたとしても、表情には表さず、 負けた原因をじっと噛み締めているタイプでした。 私には彼が勝敗よりも、もっと奥深い碁の玄玄の妙を求めているように映りました。 |
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これは天性としか言いようがなく、彼をその後プロの道に歩ませ、 全日本のタイトル戦を戦うまでに成長した原動力と言わざるを得ません。 そして対局毎に対戦相手から碁の技を一つ一つ吸収して、 今なお、成長過程にあると言えます。 彼の吸収力は、対戦した人にしかわかりません。 この囲碁クラブでチームを作り、師匠の金山さんと団体戦に出て優勝したときの写真。 小学校4年生、大介は碁盤をもらって大喜び。嬉しそうに笑っています。 |
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金山教室の子供達と開いた囲碁合宿で村川少年が、 自分より上手の技を次々に吸収して、追い抜いて行く力は、恐ろしいほどでした。 3子で教えていた自分も、間も無く抜かれると予感しましたし、 実際1年ばかりでもう勝てない存在になっていました。 |
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私は先に、今回の王座戦タイトルマッチで井山六冠が「最も難敵を迎えた」 と書きましたが、難敵たる所以はその吸収力にあると考えています。 村川7段は、たとえ一度や二度倒れても、ただでは起きて来ません、 しっかり相手の手の内を掴み、より負けにくい碁を打って相手を苦しめます。 |
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石田秀芳プロが、村川七段を評して 「初舞台に緊張する様なやわな棋士ではない」と言いました。 今回の王座戦、勝敗は神のみぞ知るスリリングな結果になると思いますが、 あえて私は、村川七段が一勝を挙げた後、流れが変わり、新王座誕生を予想しています。 |
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第39期名人戦挑戦者決定リーグ戦 結城 聡 九段 - 村川 大介 七段 142手以下略186手完 白中押し勝ち 2014年8月21日 両者譲らず戦ったが、結城の攻めで、上辺のコウのシノギを見落としていた。 実は棋聖戦に引き続き村川は貴重な星を挙げた。 今や、村川は結城の天敵になりつつあるのだ。 |